人事院公平審査報告
 


案 件

 「平成13年第64号清水郵便局[転任処分]審査事案」

 

経  過
 

2002年 2月5〜8日
静岡市 「あざれあ」 4Fにて、口頭審理終了

 

2002年 8月2日

人事院指令13−38 不利益処分審査請求事案に関する判定 通知さる


 

 

 

 

判定を受けて - 請求者 私論

 

○請求者側最終陳述書論旨

1.意に反した強制配転である

2.配転により賃金が下がり、通勤が延び、政策提言の目的意識を奪われ、精神的重荷を負った。

3.支部書記長であるがゆえに職場から排除させられた。

4.公平審の中で「人事交流者は同一部署・課5年以上としたが、対象者が少なかったため、3年以上の者を候補者名簿に載せる事とした」とある。請求者はH9年に郵便窓口課に異動した。同一課4年の者であり、重点対象者ではない。<請求者最陳第三>

5.公平審の中で選定において「O副局長は候補者名簿の備考欄に、請求者のみ『昇任を断る』と書いてあったと証言したが、K総務課長は「なにも書いてなかった」と断言した。処分者側に嘘がある。仮に『昇任を断る』と前A総務課長が記載したのなら、職員申告書とH13年1月末までの対話の中でそのようなやりとりがないのだから、なにを根拠に記載がされたのか。その記載こそが、(公平審で明らかにされた)請求者を選定した一番の根拠であるが、記載すべき実正がない。<請求者最陳第二、4項>

公平審で明らかにされた備考欄記載の疑問。請求者は同一課4年に過ぎない点。これをどう人事院が答えるかが期待された。

 

○処分者側最終陳述書論旨

1. 南局郵便課は第一郵便課、第二郵便課。郵便課、郵便窓口課と名称を変えても郵便内務業務をしてきたから同一課と考えられ、昭和60年8月以降、請求者は16年間同一部署にいたといえる。

2.人事交流は人事異動として、人材育成と一般職員の効率的配置・活用を目的に、業務上の必要から実施される。

3.本人の経済的不利益。賃金はその担務に対する手当であり通勤時間は1時間30分を超えない、30分ほどのものであるから不利益とはいえない。

4.健康上の理由で請求者は精神的苦痛をおったとしているが、清水局に異動して過員で「仕事が楽になった」と発言しているのだから、健康上の問題は軽減されたことになり、不利益になったというのではなく、利益になったというべきであろう。<処分者最陳第3 5(3)エ>

5.支部書記長だから転任させることは不当労働行為というのなら書記長は転任させられないことになる。それは書記長のエゴである。むしろ公平審の中で「不当労働行為」を持ち出すことは公平審対策用の創作されたものである。

6.転任は職員の能力開発を図る観点から適法に行われたものであり、たとえ請求者にとって、郵便輸送の自己啓発の機会を奪うものであっても、自己啓発は業務に優先されるものではない。<処分者最陳第3 5請求者の主張に対して (3)ウ「A−(V)について」>

7. 請求者の人選についてはO副局長が候補者名簿の中から指名。備考欄に「総務主任を希望しない」と付記してあったから。この備考欄の付記を、K田総務課長は請求者代理人の尋問の中で「書いてなかった」と証言したが、それは冷静さを失い記憶が乱れたままに質問に応えようとして、その場をしのぐだけの証言になったからだ。事実を伝えたものではない。候補者名簿は前 A総務課長が作成したものだから。<処分者最陳第3 4 (5)イ@請求者人選>

 

請求者・所見

請求者と処分者、争点は人選における根拠。候補者名簿の備考欄への記載である。そして人事交流の対象条件としての同一課の経歴も、4年と16年の開きがある。

それにしても、4.清水に転任して楽なら不利益ではなく、利益だ。これは強制配転の精神的苦痛をまったく理解せず馬鹿にしている。5.不当労働行為を公平審で持ち出す別な意図が見える…という思わせぶりな表現。6.自己啓発なんかは、人事異動という業務に優先されるものではない。

処分者最陳の露骨な表現には、何度読み返してもはらだたしい。

では、人事院の判定はどうか−

 

○人事院判定書の論旨

1.転任は任命権者が業務上の必要に基づき、その裁量で行う。

2.請求者の経歴について、請求者はH11年7月に郵便課に改正されたから、その時点から2年であると「主張するが」(←そんなことは言っていない)郵便課と郵便窓口課統合により郵便課になったことは同一課在任期間であり、請求者は同一課3年以上で候補者名簿に記載されたことは問題ではない。

3.本件転任は清水局の郵便課に地域区分局経験者を配置するという業務上の必要に基づき、清水局局長が同課一般職員官職を増やし、請求者をそこに就けたと認められる。

4.清水のAさんは内示後に健康上の理由から取り消された。が、本件は清水局における業務上の必要に基づき行われたものである。

5.賃金、通勤時間延長の不利益は、業務手当の減少であり通勤も30分程度なら通常の範囲内である。

6.組合役員は認められるが、排除を意図したと認めるに足りる証拠はない

 

争点はH9年1月の郵便窓口課への異動をどう見るかであり、人事交流は5年以上の者が重点対象者であることは郵政の過去の判例でも明らかである。H11年7月の郵便課の統合は誰もふれてはいない。結局公平審の委員の理解はまったくされていなかったようだ。(なにを聞いてたんだ!)

もう一つの争点、候補者名簿の備考欄への記述は、請求者・処分者双方がふれながら、あれだけ公平審の場でK総務課長に「なにも書いてなかった」確認を取りながら、人事院はまったく無視を決め込んでいる。

請求者の自己啓発の剥奪。処分者側の主張は、職員本人の自己啓発などより、「業務上」必要な人事異動の優先を言う。ではその争点に対して人事院は、「清水の局長が区分局経験者を必要として転任させた」としている。いったい、今までの証拠資料の、どこに清水の局長Tの意志が出てくるのか。転任はO副局長が名簿から拾っただけである。

公平審前半を通じて支部が主張した「不当労働行為」の背景は、「取るに足りない、確たる証拠なし」で片づけられている。公平審で、「南支部は反主流派ですか」と投げかけた公平委員の疑問はどこに吹っ飛んだのか。まさに、適当な創作文で判決が降りたこととなった。

結果的に争点は埋められず、人事院には勝手に「作文」され、更に追求したいところだが、それには新たな証拠と不当労働行為という、労働組合としての対応が必要である。むしろ、人事交流の課題は、ここで明らかにさせた「手順」が今後の強制配転全てに通じない点にある。

清水のAさんの、1年後の転任はこの経過からすれば「強制配転」である。また特定の人物だけ、3年を待たずして局・課を異動する事例はこの凡例に反する。そういう意味でも、関東や関西で立て続けに人事院が行われていることは、局の強制配転の真の意図を暴くものでもある。

それにしても人事院には、最終陳述の双方の争点に対して、的確に答えていただきたいものだ。べつに人事院の「創作文」を私は聞きたいわけではない。そして、人事院も民営化したら、もう少し正確な判例が出るかもしれない。請求者あっての人事院ではないか。請求者を小馬鹿にした無意味な判定だと、誰も訴えが出ず、逆に閑職になると思われるのだが。  いかがなものだろうか−