人事院 判 定

  掲載に当たって

属人名については伏字としてあります。それ以外は原文のままです。


  

人事院指令13−38

不利益処分審査請求事案に関する判定  

平成13年第64号事案

請求者 ○○○○

処分者 清水郵便局長 ○○○○

 人事院は、上記事案について、次のように判定する。

主 文

本件転任処分を承認する。

事実及び争点

1 処分の内容

処分者は、請求者に対し、平成13年9月3日付けで、静岡南郵便局(以下「静岡南局」という。)郵便課主任から清水郵便局(以下「清水局」という。)郵便課主任への転任処分を行った。

2 争点

1 請求者の主張の要旨

1)本件転任は、一貫して転任を拒否する旨表明してきた請求者の意に反して、強制的になされたものである。

2)請求者が静岡南局郵便課に在任した始期は、郵便窓口課が郵便課になった平成11年7月からであり、請求者は、転任の対象である同一局かつ同一課に3年以上在任する者に該当しない。

3)転任は欠員補充のために行われるべきであるにもかかわらず、本件転任により、転出局である静岡南局郵便課の一般職員(主任を含む。以下同じ。)は欠員となり、転入局である清水局郵便課の一般職員は過員となっており、国家公務員法(以下「法」という。)第35条の定める要件に該当しない。

4)本件転任は、請求者と入れ替わりに清水局郵便課から静岡南局郵便課への異動が予定された職員に対する転任発令が内示後に中止となったことに伴い、当然発令を中止されるべきであったにもかかわらず、あえて発令され、請求者が担当していた業務を担当すべき者が着任しないことから、静岡南局において郵便事故が発生した。

5)本件転任により、請求者は、次のような不利益を被った。

@ 夜間交替制加算額及び夜間特別勤務手当が減少した結果、給与が月額2万円程度減少し、また、調整手当が3%の地域から支給対象外の地域に転任させられ、3年後には手当がなくなる。

A 通勤時間が片道15分程度かち1時間程度に増加した。

B 地域区分局における郵便輸送業務について自己啓発に努めようとする目的意識を奪われた。

C 十二指腸ポリープの疑いにより1年間の経過観察を要すると診断されて間がなかったため、精神的な重荷になった。

6)本件転任は、全逓信労働組合(以下「全逓」という。)静岡南支部において、書記長として中心的役割を果たしていた請求者を職場から排除する目的で行われたものである。

以上のことから、本件転任処分は、違法、不当なものであり、取り消されるべきである。

2 処分者の主張の要旨

本件転任は、職員の能力開発、人材の育成及び職場の活性化を図る観点から、人事の刷新を図り職員の勤労意欲を高揚させるため、業務上の必要に基づいて行ったものであり、適法かつ妥当なものである。

 

理 由

1 事実の認定

両当事者の陳述、請求者側A証人、M証人、T証人、G証人、処分者側郵政局O証人、O証人、K証人、D証人、M各証人の証言、請求者の本人尋問の結果及び人事異動通知書(甲第1号証)、「静岡中ブロック人事異動NO16」と題する書面(甲第2号証)、給与明細書(甲第4号証)、職務に関する希望調書(甲第5号証及び乙第10号証)、清水郵便局郵便課職員名簿(甲第6号証)、静岡南郵便局郵便課職員名簿(甲第7号証)、人間ドック検査結果報告書(甲第8号証)、定期大会議案書(甲第9号証及び同第10号証)、人事異動についての対話のメモ(甲第11号証)、「人事交流案件に対する地本見解について」と題する文書(甲第14号証)、郵政事業論文受賞論文集(甲第15号証)、ビラ(甲第21号証)、全逓静岡南支部機関紙「みなみ風」(甲第40号証)、郵便事業論文下書き(甲第54号証)、静岡南郵便局組織図(乙第1号証の1及び2)、静岡南郵便局郵便課組織図(乙第2号証の1及び2)、清水郵便局組織図(乙第3号証の1及び2)、清水郵便局郵便課組織図(乙第4号証の1及び2)、郵政事業庁職務規程(抄)(乙第7号証)、「普通局業務推進連絡ブロック」と題する文書(乙第9号証)、郵政事業活性化計画(乙第11号証)、通勤届(乙第12号証の1)、通勤手当特例加算額通勤届(乙第12号証の2)、成人病検診受検者に対する健康指導通知(乙第14号証)、請求者に係る転任前後の給与比較表(乙第15号証)、対話シート(乙第17号証から第28号証まで)、「郵便関係職員(内務)に係る俸給の調整額・特殊勤務手当等」と題する文書(乙第29号証)、「静岡南郵便局郵便内務事務関係課組織改正の推移」と題する文書(乙第30号証)の各記載内容を総合すれば、次の事実が認められる。

 

1 本件転任の背景

1)東海郵政局は、郵政省が平成3年11月に策定した郵政事業活性化計画への取組の一環として、一般職員の人事交流の推進に取り組むこととし、管内の郵便局等に対し、同10年には、職場の活性化及び職員の育成を図るため、現勤務地での勤務に固執する職員(以下「勤務地固執職員」という。)についても積極的に人事交流を行うことを内容とする通達を発出し、また、同11年1月には、@人事交流の対象となる職員は、同一局かつ同一課の在任期間が3年以上の職員とし、5年以上については重点対象職員とすること、A人事交流の範囲は、原則として通勤所要時間1時間30分以内で行うことを内容とする通達を発出した。

2)東海郵政局は、職員に人事交流についての意識を持たせるため、「頼れる転勤情報マガジンYOU say」と題する冊子等を作成し、総務主任以下全職員に配布した。また、同郵政局は、管理者に対し、職務に関する希望調書によって勤務地に関する職員の意向などを把握するとともに、人事交流についての理解を深めさせるなどのため、職員と個別対話を行うよう指導している。

3)東海郵政局では、管内の郵便局を15の地域に分け、それぞれに普通局業務推進連絡ブロック(以下「ブロック」という。)を置いてブロック内各郵便局のネットワークによる協力体制の確保等を図ることとしており、人事交流案の作成及びその調整、勤務地固執職員を異動させる場合の同郵政局への事前協議などを各ブロックに置かれている幹事局に行わせている。

請求者の転出局である静岡南局及び転入局である清水局は、いずれも静岡中ブロックに所属し、その幹事局は静岡中央郵便局(以下「静岡中央局」という。)である。

4)東海郵政局は、平成13年度の人事交流の実施に当たり、同13年1月下旬、静岡中ブロックの局長会議において、各郵便局に対し、人事交流への取組を指示し、具体的内容については後日通達で通知する旨伝えた。

静岡中ブロックの幹事局である静岡中央局は、管内の郵便局等に対し、同13年度の人事交流の対象となる職員について人事交流候補者調書(以下「候補者調書」という。)及び職員との対話内容等を記録した対話シートを同13年2月末までに提出するよう指示した。これを受けて、各郵便局は、同月末までに候補者調書及び対話シートを静岡中央局に提出した。

5)東海郵政局は、平成13年3月下旬、同13年度の人事異動方針に関する通達を発出し、管内の郵便局に対し、人事交流の対象となる職員に関しては、前記(1)@に加え、同一局かつ同一課の在任期間が10年以上の職員の人事交流について重要課題として取り組むこと、勤務地固執職員については個別対話をおおむね年に4回以上行うことを指示した。

6)静岡中央局は、平成13年7月中旬、ブロック局長会議を開催し、各郵便局等に対し、同年2月に提出した後に作成した対話シートを追加提出するとともに、各課ごとの転出可能な職員数を連絡するよう指示した。

7)静岡中央局は、平成13年7月下旬、各郵便局から提出されていた候補者調書に記載された職員の年齢、経験年数、通勤事情及び健康状況、対話シートの内容等を総合的に勘案して人事異動案を作成した。静岡中央局は、東海郵政局に対し、勤務地固執職員を異動させることについての事前協議を行い、内諾を得た。

同年8月上旬、静岡中央局は、人事異動案を各郵便局に提示した。この人事異動案について転出局と転入局がそれぞれ検討し、幹事局の静岡中央局が必要な調整をした後、同郵政局の承認を得て異動が決定され、同月27日、異動する職員に対して内示が行われ、平成13年9月3日付けで異動が発令された。

なお、静岡中ブロックにおいて、同日付けで転任を命じられた一般職員は、24名であった。

 

2 本件転任について

1)請求者の経歴等

(ア)請求者は、昭和52年12月9日江戸川郵便局保険課に採用され、同60年8月15日静岡南局第一郵便課勤務となり、平成元年4月24日役職名称改正により同課主任となり、同3年10月1日組織改正により同局郵便課主任となり、同9年1月17日同局郵便窓口課主任に配置換となり、同11年7月10日組織改正により同局郵便課主任となり、同13年9月3日清水局郵便課主任に転任した。

(イ)静岡南局は、他地域の郵便局から送付された郵便物を区分し受持地域内の郵便局へ送付する事務及び受持地域内の郵便局から送付された郵便物を区分し他地域の郵便局へ送付する事務を行う郵便局である地域区分局であるが、清水局は地域区分局ではない。

(ウ)請求者は、本件転任前、郵便輸送の要となる地域区分局の業務に関し、民間宅配業務と比較した場合の課題や将来の展望について、郵政省が募集した郵政事業論文に応募して入賞したり、管理者との対話の中で提言するなどしていた。

2)本件転任の経緯

(ア)静岡南局では、平成13年1月下旬の静岡中ブロックの局長会議を受けて、同年2月上旬ごろ、総務課長○○○○が、一般職員の人事交流について、職員から提出された職務に関する希望調書、職員との対話の内容等を記録した対話シートなどを参考にして候補者調書を作成し、記載内容を各課長に点検・確認させた後、静岡南局局長○○○○の了解を得て静岡中央局に提出した。請求者については、10回分の対話シートが提出された。

なお、静岡南局は、人事交流の対象となる職員の選定に当たって、同一局かつ同一課の在任期間の計算については、組織改正によって課の統合等があっても、所掌事務から実質的に同一課としての継続性が認められる場合には、同一課として扱うこととし、請求者については、平成13年9月の本件転任直前に所属していた郵便課は同11年7月に郵便窓口課と郵便課が統合してできた課で、郵便窓口課の所掌事務はすべて郵便課に引き継がれており、請求者がその郵便窓口課に同9年1月から組織改正に伴い同11年7月に郵便課主任を命じられるまで所属していたこと等から、同一局かつ同一課の在任期間が3年以上であるとして、○○総務課長が、請求者を候補者調書に記載した。郵便課職員については、一般職員55名中請求者を含む53名が候補者調書に記載された。

(イ)静岡南局は、平成13年7月中旬、静岡中ブロックの幹事局である静岡中央局から各課ごとの転出可能な職員数の照会を受けて、業務運行等を考慮して検討し、郵便課については2名が転出可能である旨回答した。

(ウ)静岡中央局は、平成13年7月下旬、地域区分局経験者を配置することを希望していた大規模局である清水局の郵便課に請求者を転任させる方針を固めたが、請求者が現勤務地に固執するなどしていたことから、東海郵政局に対し、請求者の候補者調書及び対話シートを送付し、請求者を転任させることの可否について問い合わせた。同郵政局は、請求者の転任は転居を伴ったり家庭事情に影響を与えたりするものではなく、また、郵便輸送体系についての研究は静岡南局以外の郵便局にいてもできることなどから、転任させることは差し支えない旨静岡中央局に回答した。

(エ)静岡中央局は、平成13年8月上旬、静岡南局に対し、請求者を静岡南局郵便課主任から清水局郵便課主任に転任させる人事異動案を提示した。静岡南局は、転出可能な人数の範囲内であること、業務運行にも支障がないこと、請求者の健康状態に関しては、本件転任の直近に当たる同年5月22日実施の人間ドックにおいて「十二指腸ポリープの疑いがある」と診断され、その旨通知を受けた静岡逓信診療所長○○○○から1年後に再検査を受けるよう指示されていたが、勤務については、平常勤務でよいとされていたことから、請求者の転任には問題がないと判断し、提示された人事異動案に同意することとし、その旨静岡中央局に回答した。

(オ)請求者に係る本件転任は、平成13年8月27日請求者に内示され、同年9月3日発令された。

 

3 人事異動に伴う定員の過欠状況等

平成13年9月2日当時、清水局の郵便課一般職員の現在員が東海郵政局が通達で定めた清水局郵便課の一般職員の定員よりも1名過員となっており、請求者の本件転任により2名の過員となった。

 

4 本件転任前後における請求者に係る給与、通勤時間等の状況

1)本件転任に伴い、交替制により夜間に勤務することを常例とする職員に支給され、郵便局ごとの夜間の業務量、業務の困難度等により支給区分がAからCまでの3区分に分かれている夜間交替制加算額について、請求者に係る支給区分が静岡南局の場合のA区分(支給月額8,000円)から清水局の場合のB区分(支給月額5,500円)に変更になったことから、請求者に対する支給額が月額2,500円減少し、また、職員が正規の勤務時間として新夜勤等に服したときに支給され、郵便局ごとの夜間の業務量、業務の困難度等により支給区分がAからFまでの6区分に分かれている夜間特別勤務手当についても、請求者に係る支給区分が静岡南局の場合のA区分(1回につき3,200円)から清水局の場合のE区分(1,700円)に変更になったことから、請求者に対する支給額が月額9,000円程度減少した。

また、調整手当は、民間における賃金、物価及び生計費が特に高い地域に在勤する職員に支給される手当であって、郵便局の所在する地域によって支給の有無や支給される場合の支給割合が異なり、静岡南局はその支給割合が、俸給等の月額の3%とされているが、清水局は支給対象とされていない。なお、支給割合が転任前よりも低い地域又は支給されない地域に異動した場合、異動の日から3年間に限り、異動日の前日に在勤していた地域に係る支給割合によることとされており、請求者が引き続き清水局に勤務するとすれば、異動の日から3年間経過後は、同手当は支給されなくなる。

2)請求者の片道の通勤時間は、本件転任前は車を利用して15分程度であったが、転任後は電車と自転車を利用して30分程度であり、15分程度長くなった。

 

5 請求者の組合活動

請求者は、平成元年に全逓静岡南支部が結成された際、同支部書記長に選任され、本件転任時までその役職にあり、同支部の活動方針の取りまとめを行い、定期大会において説明するなど中心的役割を果たしていた。

 

2 判断

1 請求者は、本件転任は、一貫して転任を拒否する旨表明していた請求者の意に反して、強制的になされたものである旨主張するが、そもそも転任は、任命権者が、業務上の必要に基づき、その裁量により行うものであり、職員の同意を要件とするものではないことから、請求者の主張は認められない。

 

2  請求者は、請求者が静岡南局郵便課に在任した始期は、郵便窓口課が郵便課になった平成11年7月であり、請求者は、転任の対象である同一局かつ同一課に3年以上在任する者に該当しないにもかかわらず、本件転任が行われた旨主張するので、これについて検討する。

前記第1の2(1)(ア)認定のとおり、請求者の郵便課における在任期間は3年に満たないが、郵便課は平成11年7月に請求者がそれまで所属していた郵便窓口課と郵便課とが統合されてできた課で、郵便窓口課の所掌事務はすべて郵便課に引き継がれており、人事交流の対象となる職員の選定に当たって、それら郵便窓口課と統合後の郵便課を同一課として取り扱うことは、人事交流の趣旨にかんがみ相当と認められ、請求者のそれら両課を合わせた在任期間は3年を越えることとなるものである。

したがって、請求者の主張は認められない。

 

3  請求者は、本件転任により、静岡南局郵便課の一般職員は欠員となり、清水局郵便課の一般職員については、請求者が過員となっており、法第35条の定める転任の要件に該当しない旨主張するので、これについて検討する。

前記第1の3認定のとおり、平成13年9月2日当時、清水局の郵便課一般職員の現在員が東海郵政局が通達で定めた清水局郵便課の一般職員の定員よりも1名過員となっており、本件転任は、既に1名過員であった同課に請求者を転任させるものであったが、法第35条の官職に欠員を生じた場合とは、特定の官職についての欠員を意味するものであって、同郵政局が管内の各郵便局について通達で定めた各課ごとの定員と実人員との差の員数を指すものではない。業務上の必要により、同郵政局が各郵便局ごとに通知した定員の範囲内で、各郵便局が個々の官職を暫定的に増減することは認められているところであり、本件転任は、大規模局である清水局の郵便課への地域区分局経験者の配置という業務上の必要に基づき、清水局局長が同課一般職員の官職を増やし、請求者をそこに就けたものと認められる。

したがって、請求者の主張は認められない。

 

4  請求者は、本件転任は、請求者と入れ替わりに清水局郵便課から静岡南局郵便課への異動が予定された職員に対する転任発令が内示後に中止されたことに伴い、当然発令を中止されるべきであったにもかかわらず、あえて発令され、請求者が担当していた業務を担当すべき者が着任しないことから、静岡南局において郵便事故が発生した旨主張するので、これについて検討する。

本件発令と同日付けで、清水局郵便課主任から静岡南局郵便課主任に転任予定であった職員が、内示後に健康上の理由から発令が中止になった事実は認められるが、本件転任は前記3のような清水局における業務上の必要に基づき行われたものであるから、清水局郵便課主任から静岡南局郵便課主任に転任予定であった職員に対する発令の中止に伴い、本件転任も当然に発令を中止すべきであったとする請求者の主張は認められない。また、上記発令が中止となったことによって静岡南局において郵便事故が発生した事実は認められない。

したがって、請求者の主張は認められない。

 

5  請求者は、本件転任によって、@夜間交替制加算額及び夜間特別勤務手当が減少した結果、給与が月額2万円程度減少し、また、調整手当が3%の地域から支給対象外の地域に転任させられ、3年後には手当がなくなり、A通勤時間が片道15分から1時間に増加し、B地域区分局における郵便輸送業務について自己啓発に努めようとする目的意識を奪われ、C十二指腸ポリープの疑いにより1年間の経過観察を要すると診断されて間がなかったことから、精神的な重荷になるなどの不利益を被った旨主張するので、これについて検討する。

@については、前記第1の4(1)認定のとおり、請求者は、本件転任により、夜間交替制加算額の支給月額が2,500円、夜間特別勤務手当の支給月額が9,000円程度それぞれ減少したが、夜間交替制加算額は、夜間における業務量、業務の困難度等を考慮して支給される手当であり、また、夜間特別勤務手当は、新夜勤及び調整深夜勤の業務量等に応じて支給される手当であり、郵便局が変わることによりそれぞれ支給月額が減少することがあったとしてもやむを得ない。また、調整手当は、民間における貸金、物価及び生計費が特に高い地域に在勤する職員に支給される手当であって、郵便局の所在する地域によって支給の有無や支給される場合の支給割合が異なるから、勤務する郵便局が変わることにより支給割合が減少したり、又は支給されなくなることがあったとしてもやむを得ない。

Aについては、前記第1の4(2)認定のとおり、請求者は、本件転任により、通勤時間が15分程度増加し30分程度になったものであるが、この程度の通勤時間は通常の範囲内のものと認められる。

Bについては、自己啓発は、自ら問題意識を持ち、能力や資質の開発と向上を図るために自主的に学習に努めるものであるが、転任によってその間題意識を巡る環境に変化が生じたからといって、その転任を違法、不当であるとすることはできない。

Cについては、前記第1の2(2)エ認定のとおり、請求者については、平成13年5月22日に実施された人間ドックにおいて「十二指腸ポリープの疑いがある」と診断され、静岡逓信診療所長が1年後に再検査を受けるようにと指示したが、勤務については、平常勤務でよいとされていたものであり、仮に、請求者にとって本件転任が精神的に重荷になったとしても、そのことによって本件転任を違法、不当とすることはできない。

したがって、請求者の主張は認められない。

 

6 請求者は、本件転任は、全逓静岡南支部書記長である請求者が平成13年度の支部大会に活動方針案を提示した欠先になされたものであることからすれば、組合活動家である請求者を職場から排除する目的で行われたものである旨主張するので、これについて検討する。

前記第1の5認定のとおり、請求者が平成元年に全逓静岡南支部が結成されて以来、同支部書記長の役職にあって同支部の活動方針をとりまとめ定期大会において説明するなどしていた事実は認められるが、本件転任がそうした請求者を職場から排除する目的で行われたと認めるに足りる証拠はない。

したがって、請求者の主張は認められない。

 

3 結論

以上のとおり、本件転任処分は、任命権者が、業務上の必要に基づき、請求者の通勤事情、経験年数等を勘案して、その裁量の範囲内で行ったものと認められ、また、他に本件転任処分を取り消すべき特段の理由も認められない。

よって、主文のとおり判定する。

  平成14年8月2日