こんな時は調停

債務額が少なく支払不能といえない場合

破産制度における破産の要件は支払不能です。支払不能であるか否かの認定は 個別の事情により左右されるので、一般的な基準をだすことが出来ませんか、 月収25万円の人が300万円を越える高利の負債を負っていれば月々の返済 額は15万円程度となり、支払不能といえるでしょう。では同じ人が150万 円の高利の負債を負っているとしたら、特別に必要とされる支出がなければ支 払不能の認定は難しいと考えられます。
このようなとき有効に活用できるのが、この調停制度です。
なぜ有効に活用できるかを考えるのには、この制度がないことを考えればわか りやすくなります。上記の例でいっても月々の返済額は7万円乃至8万円に及 びます。月収25万円の人がこれだけの金額を返済するのはたいへんなことで す。しかもまた30%近い高利の利息がつくのですから、返済してもなかなか 元金は減りません。さらにまたこの程度の借金であればサラ金はまだまだお金 を貸してきます。そこで借金返済のために他のサラ金で借金してという悪循環 に陥る危険は極めて高いものとなります。
このようなとき調停制度は、利息制限法に基づく金利に引き直し、現在の残高 を確定し、その後の支払も低利な金利・あるいは金利をカットして分割払いと いうかたちで調停委員が交渉してくれますので、自分で無理のない生活設計を 立てることも可能になります。

保証人がいる場合

ある人が多重債務に陥り、客観的に見て支払不能状態である場合であっても、そ の大部分の債務に保証人がついている場合は、破産の効力は保証人に影響がない ので、破産者にかわり保証人が債務の弁済をしなくてはなりません。
保証人もまた保証債務の履行により支払不能となるのでしたら保証人も含めて破 産の申立をすることになりますが、保証人に支払い能力がある場合には、わざわ ざ破産をしても、借金総額は同じということになり、破産制度を利用する意味が 薄れてきます。(但しここのところは微妙な判断を必要する場面とがありますの で、専門家とよく相談してから選択してください)
そのようなとき調停制度を、利用します。先ほども説明しましたが、調停制度は 利息制限法に引き直し元本を確定しますので、長い間支払っている業者の債務は、 当然に減額されますし、また書き換え(借り換え)が中途でなされていても、継 続した契約とみなされますので、この場合も同様です。
そして債務全額の見直しをして、その後支払方法を考えるのですから、債務者に 不利になることはありません。
しかしながら何度もいうようですが、決して無理をしてはいけません。保証人も 交えて、専門家に相談するのがよいでしょう。

その他の場合

債務者の収入が比較的多く、且つ安定している場合。
公務員や大手企業に勤務している債務者の場合は、退職金の額が(その時点で退職した場合の退職金予定額) が、多額となり、破産制度を選択すると退職金予定額の1/4を破産財団に提供する必要があるため 調停制度を利用した方が有利な場合が多い。
まとまった返済金が用意できる場合。
親族等の援助で、まとまった返済金が用意できる場合は調停を利用してください。
この場合の弁済額は少なくとも契約当初から利息制限法で引き直した金額を返済金としてください。
よく親族等の援助で、肩代わりとして全額サラ金等に支払い、その後3年くらい経過したら、 またサラ金からの借金ができてしまったという話を聞きますが、これは債務者の近隣に「支払い 能力がある人」がいると広言しているようなものですから、サラ金側は、債務者本人に執拗に お金を借りるように勧め、債務者もその勧誘に乗って、再び過ちを繰り返してしまうのです。
自営業者が営業を継続していく場合。
債務発生の原因の大部分が、自営している営業にあるとしたならば、破産免責を選択すれば その営業は続けることはできません。このような時は、調停を利用し、債務額を圧縮して 営業を継続するしかありません。
この場合も、債務の額と営業収益のバランスをよく考えて、判断する必要があり、どう考えても 支払不能であれば、破産を選択すべきです。
債務者が不動産等の財産を所有している場合。
債務者が不動産等の財産を所有している場合には、破産の場合には破産財団に提供しなくてはなりません。
また債務の額が所有する財産より少ない場合には、そもそも支払不能の要件から外れるのですから、 破産の選択はできないことになります。しかしこのまま放置しておけば破綻の恐れがあるのですから、 このような場合には調停を利用し、経済環境の改善に努めてください。
免責不許可事由が著しく大きい場合。
破産を選択しても、免責不許可事由の存在が大きく、免責を受けられる見込みがほとんどない場合は、 調停を選択するしかありません。しかし、破産の構成等で述べたとおり、 免責不許可事由が存在する場合でも、破産を選択する方が債務者の更生に役立つこともありますので、 慎重で幅広い判断が必要で、専門家に相談した方がよいと思われます。