クレ・サラ問題に関する書籍

 

詳解 消費者破産の実務 書 評


法律新聞(平成10年10月9日)
 自己破産の申し立て件数が毎年過去最悪を記録し、深刻化する多重債務問題
について、クレジット・サラ金問題被害救済の第一線で活躍する著者が、消費
者信用の現状と問題点に触れ、多重債務の整理方法を紹介したうえで、取立行
為や破産申し立て後の法的請求への対応を指南した、マニュアルで、消費者破
産に関する最先端の今日的情報を提供している。
 本書は八章で構成。「クレジット・サラ金被害者救済の実務」の続編で、
「不健全な金融制度に対する正当な批判であり、社会の病理現象に対する真し
な改善であり、法的救済を受ける機会のない社会的弱者の保護であり、これら
すべてを統合した」精神の大切さを訴えているのが特徴。
 無人契約機の問題点としては、大蔵省通達の「社会的に過剰宣伝であると批
判をあびるような過度の広告をしてはならない」に違反していると指摘。この
ほか、過剰融資をめぐる問題点として、テレホンキャツシング・メールキャッ
シングがいずれも与信方法に問題があるのは間違いないと述べている。
 次に、支払い停止手続きである供託や、支払い継続手続きの債務弁済協定調
停など多岐にわたる多重債務の整理方法について解説した。
 また、破産申し立て後の法的請求への対応としては、みなし弁済の立証方法
などを解説したうえで、書式を混じえながら、支払い督促・少額訴訟への対応
など、訴訟行為に対する具体的な方法を教示し、訴訟の流れも併せて紹介して
いる。


消費者法ニュース36
 本書を執筆された芝豊・古橋清二氏は、長年クレジット・サラ金被害者
の救済に全力を挙げて取り組んでこられた気鋭の司法書士である。
両氏は、三年前に「クレジット・サラ金被害者救済の実務」(民事法研
究会刊)を発表しており、その書を通じてクレ・サラ問題の本質を多くの
市民にアピールしていたが、この三年の間に、クレ・サラ問題およびそれ
を取り巻く環境が予想外のスピードで変化したため、そうした状況に対応
し、被害者救済へのマインドを提示すべく本書を著されたものである。
 ご周知のとおり、金融ビッグバンのもとで、一方でクレ・サラ業者はま
すます隆盛し、他方破産件数の急増、無人契約機等による被害の拡大とい
う事態が生じている。
クレ・サラ被害救済に携わる法律実務家の数も増えたが、業者は安易に
貸し出す一万で、さらに被害者を追い詰めるように執ように取立を強化し
ているのが実情である。
こうした業者の動きに、法律実務家も迅速に対応しなければならないわ
けであるが、本書は、そのような意味で最新の情報を提供することを一つ
の目的としている。
 さらに、法待実務という技術に偏ることなく、クレ・サラ問題にどう向
かうべきかという「マインド」を提示しているのも、本書の特徹である。
著者によれば、このマインドとは、「不健全な金融制度に対する批判で
あり、社会の病理現象に対する真摯な改善の要請であり、法的救済を受け
る機会のない社会的弱者の保護であり、これらすべてを統合した精神を保
持し、社会に対して発言する昂然たる姿勢である」。
 このようなマインドに裏打ちされて、本書に明らかにされている実務は、
まさに被害者救済に日々携わる人々にとって大きな指針となると思われる。
 多重債務整理の方針の立て方、破産の申立てから免責までの手続の流れ
と申立書や陳述書の豊富な実例はもちろんであるが、本書では、業者側か
らの執ような取立・請求に対する対応について、多くの頁を割いているの
も特徴である。
特に最終章である第八草では「破産申立て後の強制執行への対応」と題
して、公正証書や支払督促に基づく強制執行への対応方法、さらに、免責
確定後の差押の解除をめぐる具体的な対応方法まで触れられている点は、
被害者救済を現実のものとするために著者が実践してきた貴重な実務紹介
と言えよう。