調査のためのアルバイト

こんなアルバイトはない

平成12年に、日本全国で考えられないような詐欺事件が多発しました。
詐欺の手口は極めて簡単で
「消費者金融の上層部から頼まれたもので、貸出実績を上げるために金を借りて欲しい。 返済はこちらで行い、アルバイト料として借りた金の2割を支払う」
または
「消費者金融の金利などを調査している。借りた金はこちらで返しておく」
というものです。
いくら何でも、このような簡単な詐欺話にのる人はいないと思われるのですが、 100人以上の若者が、この話に乗り自分の名前でサラ金から100万円程度のお金を借り アルバイト料として、数万円から数10万円のお金をもらっています。
当初は詐欺が露見しないように、相手方は返済をしていたようですが、論理的に考えても すぐに行き詰まるのは目に見えており、結局「アルバイト」をしたと思っている若者の 債務のみが残ることになりました。
規模はずっと小さいのですが、私のところへも多重債務者に陥る原因の一つとして、同様なアルバイトをした青年 が相談に来たことがあります。
この青年は、「アルバイト」といっても結局一円のお金ももらって いないので、正確には何といっていいのかわかりませんが、きっかけは「友人からの携帯電話」での 話であったようです。その友人もまた何も知らず「いいアルバイトがある」と本気で 思って紹介したようです。
先ほどの例でも何故あれだけ多数の若者が被害者になったかという疑問は、「携帯電話での友人からの紹介」 がキーワードのようです。
大量の宣伝広告の中に埋没し、取捨選択が困難となった若者は、身近にいる友人の直截な言葉 は無条件に信ずるという傾向に陥っていると言うことができましょう。
他のマルチ商法の被害にあった若者も、最初の紹介はやはり友人からの電話でした。
「世の中にうまい話はない」ということは、苦労をして大人になった人間にとっては自明のことなのですが、 これから社会にでる、あるいは社会にでたばかりの若者が「夢のような話がある」 事を信じてしまう心理状態から抜け出せなければ、同一の子供だましのような事件が 後を絶たない可能性があります。