多重債務からの脱出

 

司法書士等

破産申立中の取立訴訟に対する対応

破産申立中の貸金請求事件が、頻繁に提起されている。この事件に敗訴すれば 業者側は直ちに、給料等の差し押さえをしてくるのであるから、債務者の経済 的更生を阻害すること著しい。このような抜け駆け的取り立ては、破産制度の 債権者の公平という大命題にも反する行為であるので出来る限りの手を尽くし て、債務名義の取得を遅らせる必要がある。取立訴訟の対応全般は拙書「クレ ジット・サラ金被害者救済の実務」(民事法研究会)を見ていただきたいが、 ここでは、破産宣告がでた場合の取立訴訟の中断の上申書と(最近は中断を認 める簡易裁判所が増えてきた)債務名義をとられてしまった場合の簡単な控訴 状(理由 過剰与信)を挙げておきます。 皆さんの健闘を祈ります。

訴訟中断の上申書

訴訟中断の上申書              原 告  0000株式会社          被 告  0000  右当事者間の御庁平成0年(ハ)第000号貸金請求事件について、被告は、 次のとおり上申する。  平成 0年 0月00日        右被告  0000 00簡易裁判所  御 中 記        上 申 の 趣 旨 一 本件訴訟は平成0年0月0日午前一〇時をもって中断した。   との確認を求め、あわせて右にともなう裁判官の訴訟指揮を求める。        上 申 の 理 由 第一 被告は、00地方裁判所平成0年(フ)第000号破産申立事件の債務 者でもある。右事件は、平成0年0月00日に破産審尋期日を了し、被告 は平成0年0月0日午前一〇時、破産宣告を受けた。 第二 ところで、民事訴訟法二一四条は、訴訟当事者が破産宣告を受けた場合、   破産財団に関する訴訟は中断する旨規定している。そして、右破産手続が解   止されたときには、訴訟手続は被告が当然受継し、訴訟が続行することにな   る。   すなわち、破産制度の立法趣旨の一つに債権者への公平な配当の確保という   目的あるため、破産宣告によって破産者の積極財産及び消極財産はすべて破   産財団に吸収(破産法六条)され、破産者は破産財団の管理・処分能力を失   い、また、破産債権者も個別的請求が許されなくなる(破産法一六条)。 第三 右の考え方は、現行破産法が破産管財人の選任を必要とする破産事件を原   則とするところから導かれるものと思料するが、被告のように同時廃止決定   がなされた場合において、次の理由により、被告は当事者適格を喪失し、本   件訴訟は中断すると考える。    本件訴訟は原告の被告に対する金銭債権にもとづくものであるから、被告   の破産財団に関する訴訟というべきである。破産手続に関する裁判に対し ては、破産法に別段の定めがなければ利害関係人は即時抗告をすることが でき(破産法一一二条)、即時抗告期間が満了しなければ裁判は確定しない が、破産宣告、同時廃止決定は、いずれも別段の定めはなく、即時抗告が許 容されている。しかも、破産手続に関する裁判が公告を必要とする場合には 抗告できる期間は公告の日から起算して二週間である(破産法一一二条)か ら破産宣告及び同時廃止決定は、官報公告後二週間で確定することになる。    すなわち、それまでになされた即時抗告により、破産宣告、同時廃止決定   は取消される可能性がないとはいえず、同時廃止決定のみが取消された場合   には異時廃止事件となる。    一方、破産はその宣告の時より効力を生ずるものとされている(破産法一   条)。一般に、不服申立のできる裁判は確定しなければ効力を生じないが、   破産法一条はこの例外を定め、破産手続を迅速に行うため、破産宣告決定の   確定を待たずに破産の効力を発生させる旨規定している。    したがって、破産宣告及び同時廃止決定がなされた場合、破産裁判所が破   産の宣告をした時に破産手続が始まり、同時廃止決定の確定(官報公告後二   週間)により破産手続が解止することになり、その間被告は当事者適格を喪   失し、訴訟が中断すると考えられる。    右のとおりであるから、被告は当事者適格を失い、本件訴訟手続は中断し   ている。 第五 よって、被告は御庁に対し、本件訴訟は平成0年 0月 0日午前一〇時   をもって中断したとの確認を求め、あわせて右にともなう裁判官の訴訟指揮   を求めるため上申する。        添 付 書 類 一 破産宣告・破産廃止決定正本(写し)        一通 一 「小額訴訟法」(写し)              一通 一 「消費者法ニュース」二二号(写し)        一通 一 「クレジット・サラ金被害者救済の実務」(写し)  一通  以  上

簡単な控訴状 控     訴     状     00県00市000一丁目0番00号 控訴人(被告)    0000 00市00区0000町00番00号 (送達場所)00県00市00町0番0号 被控訴人(原告)   00株式会社   右代表者代表取締役  0000 訴訟物の価格  金三九万二六八八円 貼用印紙額      金五七〇〇円  右当事者間の00簡易裁判所平成0年(ハ)第00号貸金等請求事件につい て、平成0年0月00日言い渡された判決は全部不服であるから控訴をする。        原 判 決 の 表 示        主     文 一 被告は原告に対し、金三九万二六八八円及び内金三八万五八五七円に対する  平成0年0月00日から支払ずみまで年三六パーセントの割合による金員を支  払え。 二 訴訟費用は被告の負担とする。        控 訴 の 趣 旨 一 原判決を取消す。 二 被控訴人の請求を棄却する。 三 訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。  との判決を求める。        控 訴 の 理 由 第一 原判決では、控訴人が被控訴人と契約した金銭消費貸借契約が過剰与信 にあたるか否かの判断をおこなっていない。  すなわち貸金業の規制等に関する法律一三条は過剰貸付を禁止し、さらに大 蔵省銀行局通達は貸付限度額を五〇万円又は年収の一割に相当する額とし、 年収の一割が五〇万円に満たない場合には一割基準を採用すべきであると考 えられるところ、控訴人の年収は金二六〇万円しかなく、一割基準を満たし ていない。   さらに右通達は、貸金業者は貸付金額決定にあたっては、相当の信用調査 をおこなうべきとしているが、控訴人は当時すでに二五〇万円余の負債を貸 金業者等から負っており、被控訴人がCIC等の信用情報機関に照会すれば 右事実は容易に判明できたところ、被控訴人は右照会も怠った。   よって、被控訴人の控訴人に対する融資は過剰融資に該当し無効である。 また過剰融資をした業者が債権全額の回収をはかるのは信義則から容認でき ず、権利濫用である。 (参考判例 釧路簡裁平成六年三月一六日判決(判例タイムズ八四二号)、札 幌簡裁平成七年三月一七日判決(判例時報一五五五号))  平成0年00月0日                右控訴人   0000 00地方裁判所民事部 御中