多重債務からの脱出

 

親族等近親者

親族等による債務の弁済

例えば、29歳の息子さんのサラ金からの借金を、親がいわゆる「肩代わり」 して返済する場合があります。ところが、それから3年間経過したら、その息子 さんが再び多重債務者になってしまったということが実際によくあります。 このような事態に陥る代表的な理由は次の二つが考えられます。 その1は、親族が肩代わりするとき、息子さんに対して、強い詰問口調で借金総 額・相手先を聞くことです。例えば、300万円の借金があって支払が出来ない とき、「どこに借金があるんだ」と聞くと仮定しましょう。親にとっては憤懣や るせなく、怒りたい気持ちも分からないではないですが、あまり強く聞かれたの では、ついつい言いそびれてしまうことがあります。また債務者の心理として3 00万円の借金は返せないが、50万円の借金なら返せるという錯覚に陥ること も確かで、親族のあまりの剣幕に結局50万円ないし100万円の借金を残した まま「肩代わり」してもらい、その50万円ないし100万円の借金がもとで、 再びその借金を返すために他のサラ金から借金をして・・・とおきまりのコース をたどって、再度多重債務者になってしまうものです。 その2は、サラ金等の融資の勧誘です。前の例のように一部借金が残っていても あるいは、借金の全額を返した場合であっても、債務者の近親者に弁済するだけ の資力のある人がいるという事実をサラ金側は知るわけですから、業者にとって は上得意の客ということになります。そこで業者側は執拗に「借りてください」 と懇請します。当初はメール、そのうちに電話になり、訪ねてきたりすることも あります。もちろん毅然として断ればよいのですが、業者側もそこは商売ですか ら、あの手この手で勧誘します。元々サラ金で借り入れを起こさざるを得ない状 況ですので、生活費が充分であるはずもないのですから、そこで残念ながら再び 手がでてしまう、というパターンが多いようです。 では、親族等近親者の方が多重債務に陥っている人を援助するにはどのようにし たらよいでしょうか。 まず弁護士に委任して、任意整理をしてもらうことが考えられます。今までの 借金の返済を利息制限法に引き直し、そこから弁済計画を立てるのですから、長 い間借りている場合は、減額されることもあります。また調停制度を利用する方 法もあります。さらには地元に被害者の会があれば会に相談に行ってください。 司法書士情報センターでも相談に応じます。 また、近親者に充分な資力があれば別ですが、その返済資金を他の金融機関から の借り入れでまかなうような場合は、無理をせず破産の申立も考えなくてはなり ません。

近親者の保証 例えば近親者が、保証人になることを頼まれたとします。当然依頼者は迷惑はか けないからというでしょう。しかしながらサラ金等は原則的に保証人を必要とし ていません。保証人を要求される場合は、負債状況が、極めて深刻なときと考え ていいでしょう。業者はコンピュータを備えており、負債状況は即座に調べられ るシステムを作っています。その情報が多重債務であると言っているから、保証 人を要求しているのであって、通常の状況ではありません。 したがって保証人となることは、きっぱりと断るべきです。それと同時に多重債 務の解決方法を考えてやってください。 問題なのは次のような場合です。 例えば、50歳になる主婦が買い物等でクレジット会社を利用している。順調に 返済しているときはいいのですが、何らかの事情で返済が困難になってしまい、 延滞がはじまってしまった。そこにクレジット会社の社員が現れ、「00さん、 00さんのお宅も大変でしょう。月々の返済金を減らしましょう。月々の返済金 は3万円で(それ以前は5万5000円)結構です。そのかわりにこの書面にサ インしてください。我が社も00さんの大変さを考えて譲歩しているのですから 00さんの方も、当社の誠意に答えるということで、旦那さん、娘さんが保証す るということでいかがですか」 00さん側は延滞しているという負い目もあって、さして深く考えもせず保証人 欄にサインするケースがよくあります。 しかも同時に債務承認契約なる書面(これは簡単にいうと現在の債務ー残債務元 金+損害金ーを新たな元本とし、この元本に対して利息を取るというもの−重利 となり借金総額が一気に膨らむ)にサインを求められ、さらには公正証書にさせ られる場合もあります。 このようなかたちで保証人となると、債務整理のためには、一家全員を対象とす るしかなく、元々は母親一人の債務であったものが、家族全員の債務であること になってしまい、種々の困難な場面に遭遇します。 ですから、このような場合も保証は拒否し、債務整理の方法を考えるべきです。

債務者の行方不明 クレジット・サラ金での借金が多額となり、その督促の恐ろしさから行方不明と なってしまう多重債務者がいます。すると業者側は、親・兄弟等に電話をかけて くることがあります。 さすが最近では露骨に子供(兄弟)の借金は親(兄弟)の借金とまではいいませ んが、暗に多重債務者を裁判にかける等の言語を弄し、近親者に借金返済を要求 してくる時があります。もちろんその近親者が保証人になっていなければ、法的 に一切の支払義務はないのですから断固拒否すべきです。 子の不祥事は親の責任という古い徳目がありますが、この徳目は別なとき使って ください。このクレ・サラ問題で、その徳目をだしてしまうと業者側の思うつぼ で、ありとあらゆる業者が請求してくることになります。 したがってこの場合も断固拒否し、支払義務のないものに支払を強要する場合は 刑法の罪に該当する旨、業者側に警告してください。