
免責不許可事由のある場合(換金屋)
換金屋とはどういう存在で手口等は如何なるものかは、悪徳商法の項を見てください。
換金屋を使用した行為が免責不許可事由のどの項目に該当するかは異論がありますが、一般的には「破産財団
に属する財産を債権者の不利益に処分する行為」に該当すると考えられています。 クレジットで購入した
商品は、割賦金の支払が終了するまで所有権はクレジット会社にあると考えられ、クレジット会社は別除権者
の地位にあるというものの、商品そのものは破産財団に属すべき財産と考えるからです。
したがって免責の審尋等で、この点を詳細に聞かれることは「悪徳商法」に書いたとおりです。しかしながら
私の経験では一部配当等の指示をされたものもありますが、すべての事例につき免責の決定は出されておりますので、
申立書あるいは上申書等で換金屋を使用した経緯、債務者の心理の混乱、換金屋主導で換金行為が行われて
いること等を記載して裁判官の判断を仰ぐことになります。
事例 換金屋
三、多額の負債を負うに至った経緯
(前略)
申立人は何とか仕事を継続しておこない家計を改善しようと、勤めている会社の仕事が途切れると、
直ちに新たな職場を探し、魚の荷揚げ作業、プレス工、引っ越し屋、現場作業員と仕事があれば直ちに
転職をしたが、月の収入は限られており、平成一〇年になると家計は危機的状況にまで逼迫してしまった。
平成一〇年八月、危機的状況に陥ってしまった申立人の下に、00という会社から、五〇万円まで
即決融資と記載された葉書が送られてきた。
申立人は、毎月の借金の返済のことで頭が一杯であったので、甘い話しすぎるという危機感はあった
が、背に腹は代えられず葉書に記載されている電話番号に電話すると(携帯電話であったと思う)
静岡市の〇〇〇という
パソコンショップでパソコンをローンで購入し、購入したら電話をするように告げられた。申立人は
電話で指示されたとおり、〇〇〇に行き、パソコンをローンで購入しようとしたが、ローンを組めな
い旨告げられ、購入は断られた。
そこでその旨を再度電話すると今度は静岡のデパート「〇〇〇〇」の一階の貴金属売場に行き、
ブレスレットとネックレスを購入するようにいわれた。申立人は躊躇したが、電話の相手方は有無を言わせない
迫力があり、申立人は強い恐怖感を感じ結局指示されたように
動かざるをえない心理状態に陥り、ブレスレットとネックレスを四〇万円で購入した。 その時のローン
はデパート側が〇〇信販と
組んだ。申立人は商品を購入した旨を電話すると、会う場所を指定され一〇分足らずで品物を取りにきて、
申立人はその男に品物を渡し、男は申立人に一〇万円を渡した。
当然のことながら、申立人の危機的経済状況の中で、さらに四〇万円の負債が重なり、結局申立
人には、どうすることもできず経済的に完全に破綻してしまった。
四、負債総額と資産
申立人の負債は現在債権者数一一名、負債総額約四七三万円である。これに対し資産はほとんど見るものがなく支払不能であることは明らかである。
五、申立人は、現在友人の好意により、住所地で生活しているが、申立人の住民票上の住所に、
最近督促電話が頻繁にかかってきており、母親も心労で体調を崩してしまった。申立人のように
いわゆる日雇い労働者には、現在の不況が直接収入減となってしまい、いくら懸命に働こうと思っても、
働き口もなく、現在の就職口も今年の三月で現在の道路工事現場が終了すれば、次の仕事の
予定が立っていない。
またブレスレット等を購入した行為は、いわゆる「換金屋」と呼ばれる悪徳商法であることも
最近になって知ったが、当時はおかしいと思いながらも法律的な意味、ローンの仕組み等が全く
わからず、深く反省している。
申立人は、これからも一生懸命働くつもりであるが、このような経済状況に陥ってしまい、
また抜け出せない不甲斐なさに、情けなさと不安で夜も満足に眠れず、精神的、肉体的に疲弊
しきっている。
よって申立人は、早期に破産宣告をえて、更生いたしたく本申立におよぶ次第である。

債務者に退職金がある場合
破産宣告時における債務者の退職金請求権は、破産財団を構成する財産であると一般的に考えられています。
私自身はこの考え方には反対です。 反対の理由は以下のとおりです。
まず退職金請求権という債権の発生時期が確定しておりません。
また退職金額についても、全く不確定で会社が倒産することもあるでしょうし、リストラにあうこともあり、さらには懲戒解雇の場合もあります。
会社側・債務者側双方の事情によって、額は大きく変動します。
また債権執行で退職金請求権を差押えても、換価するには譲渡命令か売却命令しかなく、さらには退職金
は直接払いの原則があるので、譲受人は退職金債権が現実化しても自分に対する弁済を求めることはできません。
そうなると評価額は著しく低くならざるを得ません。このように執行可能性が非常に低い債権ですので
将来の退職金請求権は、差押禁止財産に近い財産として破産財産には属さないと考えるべきであろうと思います。
しかし実務においては、破産宣告時における退職金請求権は未現実ではあるが破産財団を構成する財産であるとされ、
裁判所によって扱いが異なりますが、一般的には差押が禁止されない範囲と同様、退職金の1/4を破産財団に
組み入れる(他は1/8、あるいは全額または上記の理由により組み入れない)とされる場合が多いようです。
もちろん通常の雇用契約において労働者の破産は契約に影響をおよぼさないことを原則としますから、退職する
必要はないのですが、指示された金員を破産財団に組み入れる必要があるため、何らかの方法で、この金員を
用立てるしか方法はありません。

債務者が生命保険に加入している場合
破産宣告時において債務者が生命保険に加入している場合、その時点における解約返戻金は、破産財団
を構成する財産になります。しかし解約返戻金が高額でない場合は一般的には管財事件となりません。
では返戻金が50万円以上ある場合はどうでしょうか。私の経験では、この場合一部配当を指示される
ことが多いように思います。生命保険は解約すると新たに入る時、保険料が高額となるので、できるなら
解約しないで用立てたいのですが、無理な場合は解約せざるを得ません。
添付する書類は保険証書の写しと解約返戻金証明書です。証明書は保険会社の支社(営業所では対応ができない
会社があります)の申し込めば1両日に出すのが普通です。
なお会社によっては「返礼金額は教えるが、証明書は出せない」という会社もあります。そのような時は
次のような上申書を出して証明書に変えざるを得ません。
上 申 書
債務者 0 0 0 子
右の者の申立にかかる御庁平成一二年(フ)第〇〇〇号破産申立事件について、破産者審尋において指摘された事項を、上申いたします。
平成〇〇年〇〇月〇〇日
右債務者 0 0 0 子
00地方裁判所民事第二部 御 中
一、〇〇〇ファミリー保険の解約返戻金について
平成一二年九月八日午後一時に〇〇〇ファミリー〇〇営業所(〇〇市〇〇町五ー九、電話〇〇〇ー〇〇〇ー〇〇〇〇)に債務者が電話をかけ、お聞きしたところ、女性従業員の方から、現在の解約返戻金は二五万五〇〇〇円であるとのことでした。
また解約返戻金の証明書は出してもらえるかお尋ねしたところ、証明書は出せないとのご返事でした。
以上ご報告申し上げます。
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