取立訴訟継続中に破産宣告・同時廃止決定がでた場合

破産申立中に貸金の取立訴訟が提起されることがあります。 破産法の本来の趣旨のひとつに、債権者の平等というものがあり、この取立訴訟は破産法の趣旨には反しますが、 判例では有効ということになっています。しかしながら、破産の申立をしてこれから経済的更生を図ろうとするとき 訴訟に負けて給料等が差し押さえられては、出鼻をくじかれた形になってしまいます。
そこで何とか免責が確定するまで、訴訟を継続させる必要があるのですが、最近では業者側の残金計算方法も 利息制限法を適用してきますし、なかなか争う武器がありません。
そのような場合に、「訴訟中断の上申書」は極めて有効です。
当初我々が理屈を考え、何度も簡易裁判所に提出したのですが、ほとんど無視されました。しかし近時においては 訴訟を中断させる裁判官も多く、これは我々の輝かしい勝利のひとつです。


訴訟中断の上申書

平成00年(ハ)第00000号貸金請求事件
原 告  0000株式会社
被 告 0000
              訴 訟 中 断 の 上 申 書

                                                   平成00年0月〇〇日

〇〇簡易裁判所民事第5室4係  御 中

                       〒000-0000   〇〇県〇〇郡〇〇町〇〇〇000番地の0
                         被 告    〇  〇  〇  〇
                         電  話     0000−00−0000

                          記
       上 申 の 趣 旨

一 本件訴訟は平成00年0月0日午後5時をもって中断した。
  との確認を求め、あわせて右にともなう裁判官の訴訟指揮を求める。
       上 申 の 理 由

第1 被告は、静岡地方裁判所平成00年(フ)第0000号破産申立事件の債務者でもある。 右破産申立事件において、被告は平成13年2月6日午後5時、破産宣告を受けた。
第2 ところで、民事訴訟法214条は、訴訟当事者が破産宣告を受けた場合、破産財団に関 する訴訟は中断する旨規定している。そして、右破産手続が解止されたときには、訴訟手 続は被告が当然受継し、訴訟が続行することになる。
 すなわち、破産制度の立法趣旨の一つに債権者への公平な配当の確保という目的あるため、 破産宣告によって破産者の積極財産及び消極財産はすべて破産財団に吸収(破産法6条)され、 破産者は破産財団の管理・処分能力を失い、また、破産債権者も個別的請求が許されなくな る(破産法16条)。
第3 右の考え方は、現行破産法が破産管財人の選任を必要とする破産事件を原則とするとこ ろから導かれるものと思料するが、被告のように同時廃止決定がなされた場合において、 次の理由により、被告は当事者適格を喪失し、本件訴訟は中断すると考える。
 本件訴訟は原告の被告に対する金銭債権にもとづくものであるから、被告の破産財団に関す る訴訟というべきである。破産手続に関する裁判に対しては、破産法に別段の定めがなければ 利害関係人は即時抗告をすることができ(破産法112条)、即時抗告期間が満了しなければ 裁判は確定しないが、破産宣告、同時廃止決定は、いずれも別段の定めはなく、即時抗告が許容 されている。しかも、破産手続に関する裁判が公告を必要とする場合には抗告できる期間は公告 の日から起算して2週間である(破産法112条)から、破産宣告及び同時廃止決定は、 官報公告後2週間で確定することになる。
 すなわち、それまでになされた即時抗告により、破産宣告、同時廃止決定は取消される可能 性がないとはいえず、同時廃止決定のみが取消された場合には異時廃止事件となる。
 一方、破産はその宣告の時より効力を生ずるものとされている(破産法1条)。一般に、不 服申立のできる裁判は確定しなければ効力を生じないが、破産法1条はこの例外を定め、 破産手続を迅速に行うため、破産宣告決定の確定を待たずに破産の効力を発生させる旨 規定している。
 したがって、破産宣告及び同時廃止決定がなされた場合、破産裁判所が破産の宣告をした時 に破産手続が始まり、同時廃止決定の確定(官報公告後2週間)により破産手続が解止するこ とになり、その間被告は当事者適格を喪失し、訴訟が中断すると考えられる。
 右のとおりであるから、被告は当事者適格を失い、本件訴訟手続は中断している。
第5 よって、被告は御庁に対し、本件訴訟は平成00年0月0日午後五時をもって中断した との確認を求め、あわせて右にともなう裁判官の訴訟指揮を求めるため上申する。
       添 付 書 類
一 破産宣告・破産廃止決定正本(写し)        一通

以  上